誕生日のパラドックス:23人で50%の理由
クラスに23人いれば、誕生日が同じ2人がいる確率は50%を超えます。多くの人が「もっと少ないはず」と感じるこの結果は、計算してみると確かに正しく、確率の直感がどこでずれるのかを教えてくれる好例です。
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誕生日のパラドックスとは
誕生日のパラドックスは、「何人集まれば、同じ誕生日の2人がいる確率が50%を超えるか」という問いの答えが、直感よりずっと少ない23人であることを指します。論理的な矛盾があるわけではなく、直感と計算結果が大きく食い違うことから「パラドックス」と呼ばれています。
ここでは、1年を365日とし(2月29日は考えない)、誕生日はどの日も同じ確率で起こると仮定して計算します。実際の出生数は季節や曜日で偏りがありますが、偏りがあると一致はむしろ起こりやすくなるため、この仮定のもとでの確率は控えめな見積もりになります。
余事象を使えば計算できる
「少なくとも1組の誕生日が一致する」確率を直接数えるのは大変です。2人一致、3人一致、2組一致などの場合分けが膨大になるからです。そこで、その反対である「全員の誕生日が異なる」確率を求め、1 から引く方法(余事象)を使います。
1人目の誕生日は何日でもかまいません。2人目が1人目と違う確率は 364/365、3人目が前の2人と違う確率は 363/365、…と続き、n 人目は (365 − n + 1)/365 です。これらをすべて掛けたものが全員異なる確率で、一致する確率は 1 − (365/365 × 364/365 × … × (365 − n + 1)/365) となります。
小さな人数で手順を確かめてみましょう。5人なら全員異なる確率は 365 × 364 × 363 × 362 × 361 ÷ 365の5乗 ≈ 0.9729 で、一致する確率は約 2.71% です。人数が1人増えるごとに掛ける分数が1つ増え、しかも分子が少しずつ小さくなるので、全員異なる確率は加速度的に下がっていきます。
23人で計算すると、全員異なる確率は約 49.27% なので、少なくとも2人が一致する確率は約 50.73% です。22人では約 47.57% で、23人が50%を超える最小の人数になります。
40人学級なら一致する確率は約 89%で、10クラスあればおよそ9クラスに誕生日が同じ2人がいる計算です。57人で99%を超え、100人では約 99.99997% とほぼ確実になります。ただし、確率が100%になるのは鳩の巣原理により366人(閏日を考えれば367人)集まったときで、それまではどれだけ高くても「確実」ではありません。
- 10人:約 11.69%
- 20人:約 41.14%
- 23人:約 50.73%
- 30人:約 70.63%
- 40人:約 89.12%
- 50人:約 97.04%
- 57人:約 99.01%
- 70人:約 99.92%
なぜ直感とずれるのか
直感がずれる一番の理由は、「自分と同じ誕生日の人がいるか」と「誰か2人の誕生日が同じか」を混同しやすいことです。自分以外の22人の中に自分と同じ誕生日の人がいる確率は 1 − (364/365) の22乗 で約 5.9% にすぎません。自分と一致する人が50%以上の確率でいるには、自分以外に253人が必要です。
しかし実際の問いは「どの2人でもよい」です。23人の中から2人を選ぶ組み合わせは 23C2 = 253 組あり、それぞれの組が一致するチャンスを持っています。人数が増えると、組の数は人数の2乗に比例して増えていくため、確率は直感よりはるかに速く上がります。たとえば人数を23人から46人へ2倍にすると、組の数は253組から1,035組へ約4倍になります。
このことから、一致確率は近似的に 1 − e^(−n(n − 1) ÷ (2 × 365)) と表せます。23人を入れると約 50.0% となり、正確な値ともよく合います。50%に達する人数はおよそ √(2 × ln2 × 365) ≈ 22.5 で、日数 N に対して「√N の1.18倍程度」の人数で一致が起こりやすくなることが分かります。
サイコロで確かめる
同じ考え方は、面の数が少ないサイコロでも確かめられます。6面のサイコロを4回振って、同じ目が少なくとも1回重なる確率を考えます。全部違う目になる場合の数は 6P4 = 6 × 5 × 4 × 3 = 360 通り、全体は 6の4乗 = 1,296 通りなので、全部違う確率は 360 ÷ 1,296 ≈ 27.8%、重なる確率は約 72.2% です。3回振った場合は全部違う確率が 6 × 5 × 4 ÷ 216 ≈ 55.6%、重なる確率は約 44.4% なので、6面のサイコロでは「4回」が誕生日問題の「23人」にあたる、50%を初めて超える回数です。目の種類6に対して4回という少なさは、365日に対して23人という少なさと同じ構造をしています。
6回振って全部違う目が出る確率は 6! ÷ 6の6乗 = 720 ÷ 46,656 ≈ 1.54% しかありません。6回振れば、ほぼ確実に(約98.5%)どこかで同じ目が重なります。サイコロの確率計算ツールで出目の合計の分布を見ると、2個振ったときに合計7が最も出やすい(6/36)ことなども確認でき、組み合わせの数が確率を左右する感覚がつかめます。
ハッシュ衝突など、身近な応用
誕生日のパラドックスは、コンピューターの世界でも重要です。データを決まった長さの値に変換するハッシュ関数では、異なるデータが同じ値になる「衝突」が問題になります。取りうる値の数を N とすると、およそ 1.18 × √N 個のデータで衝突の確率が50%に達します。64ビットのハッシュ(約1.8 × 10の19乗通り)でも、約51億個のデータで衝突が五分五分になる計算です。
暗号の分野ではこの性質を利用した攻撃を「誕生日攻撃」と呼び、安全性を保つためにハッシュ値の長さを十分に長くとる根拠になっています。ほかにも、ランダムに発行したIDや抽選番号が重複する可能性を見積もるときに同じ計算が使えます。
誕生日のパラドックスの計算ツールでは、人数を入力すると一致する確率と全員異なる確率、確率が50%を超える最小人数、人数ごとの確率曲線を表示します。日数も変更できるので、366日(閏年を含む場合)や、100万通りの番号で何件発行すると重複が50%を超えるか(1,178件)といった応用も計算できます。